28週後… / 104分


28週後…

 ダニー・ボイル作「28日後...*1の続編。監督は「10億分の1の男」*2を撮ったフアン・カルロス・フレスナディージョに変更。これが大正解。前作の数倍面白くなってます。

28日後...」で猛威を振るったウイルスは収まり、復興作業が始まったイギリスが舞台。(このウィルスに掛かると凶暴になって周りの人間を襲いだす為、ザックリ言ってゾンビ映画と定義しちゃっていいと思います)そのイギリスに米国主導によるNATOが派遣され復興作業を指揮している。そこに海外に渡航していた人が帰国し、アバンタイトルで、命からがら生き延びた父と、旅行に行っていた姉弟が再開する所から、物語は徐々に動き出します。この父親は生き延びるために妻を見殺しにしているのですが(そもそも母親が、あの子を家に入れなければ…)、確かにヘタレかもしれませんけど、卑怯な小悪党とはちょっと言えず、寧ろ後悔と罪悪感に押しつぶされそうになっている人間臭い父親。ありゃ逃げるよ。が、当然ソレが引き金となるのですが…

 とまあこれ以上は、余り事細かに書きやしませんが、この後起きる悲劇の入り口には母を慕う気持ちや、自責の念が根底にあって、通常映画や小説などの物語で、美談として語られるヒューマニズムによって、イギリスが大変なことになるわけです(そもそもの引き金も母親の優しさな訳ですし)。この家族の愛や勇気や希望といったハリウッド的価値観によって、イギリス全土が悲劇に巻き込まれてしまうとも言える。つまり、ハリウッドにイギリスが絶滅させられた、といい変えられる。こういったハリウッド的なドラマツルギーをひっくり返すテーマはゾクゾク来ます。

 それともう一つ。上記した内容とある意味同じなのですが、ゾンビパニック状態に陥った時に、民間人を誤射するアメリカ兵や、それに対し民間人もゾンビも纏めて殲滅しろという上官など、明らかにイラク戦争をわざわざ言うのが恥ずかしいくらい明確に描いていて。寧ろ描写としては、ゾンビよりも凶悪に描かれていて、「安全のために」「守るために」というお題目が、私たちのような民間人に向けられている言葉ではこれっぽっちもなく、「国の安全」「国を守るため」でしかないという事が浮き彫りにされています。

つまりこれはアメリカ的ドラマツルギーアメリカ的お題目、そんなもんは全部アメリカって国の為でしかねーよ、アメリカ国民ですら無く、他国の民衆なんて屁とも思ってねえというメッセージだと、自分は受け取りました。