Sweet Rain 死神の精度 / 113分


死神の精度

人気作家・伊坂幸太郎のベストセラーを金城武主演で映画化。一風変わった死神と、人間との奇妙な交流を綴る。本作は、伊坂幸太郎の小説を元に細かい変更を加え、様々な人間との交流に、一本の流れを作っているが、なるべく伊坂幸太郎の雰囲気を忠実に再現しようと頑張っている。まずアバンタイトルにオリジナルの話を入れ、少し奇妙な設定に入りやすい工夫がされていてこれはいい。また、主演を演じる金城武の少しおかしなイントネーションが、死神という異質な存在に上手くハマっている。表情やしぐさもチャーミングで、おかしさの中にも親近感を覚える。そしてヒロインを演じる小西真奈美の地味さも悪くない。ここら辺は原作のイメージとマッチしている。
逆に原作に囚われるあまり、改変が悪い方に出ている部分もある。
伊坂幸太郎と言う作家性でもあるのだが、ミステリー的なネタバレや伏線に全く思い入れが無いのか、思いっきりそれを読者に分からせながら、小気味いい文体や語り口で小粋なテーマを読ませるテクニックが彼の持ち味であり。映画でそういう描き方をしてしまうと、バカでも分かる伏線やオチが、単に雑な作りに見える。普通、余りに展開が読めると興醒めしてしまうと思う。また複数のエピソードの描き分けは、あえて色んなジャンルを器用に語り分けるテクニックが、上手さとして目につくのだけれど。この映画では一つの話のように描くため、散漫な印象を与えてしまう。原作に沿うなら、別々の監督がオムニバスで撮るくらいでいいのだ。その影響は、鈍いテンポにも現れている。一本道なのかオムニバスなのか中途半端。かつ作りが単調で、早々にこの世界観に飽きてしまう。評判の悪い犬のテロップは正直、犬に喋らせるのも寒いし、人間に変えてしまうと物語に影響が出るしで、苦肉の策だったことが伺い知れるので、目を瞑ろうかと思う。それにしてもロボットには流石に開いた口がふさがらなかった。そもそもこういった描き方なら必要ない。悪い部分も多いが、それも原作が好きならそれ程気にならないかも知れない。