昴-スバル / 105分


昴-スバル-
黒木メイサがバレエを頑張らなくても頑張る映画。
原作は漫画なのだが、漫画なら許容されていた部分が映画では限りなくご都合主義に見えてしまっていて残念。英語と中国語と日本語で会話が進んでも違和感を感じないのは漫画の中だけだろう。
バレエと言った題材が、お芸術性の高いアカデミックカルチャーであることを馬鹿にしているのか、バレエやダンスの凄さを演出的に披露してくれないので、観客なんかにバレエの良し悪しなんて分からないんだから、といった考えが透けて見えてしまう。むしろ素人が見ても、天才の区別が分からないと駄目でしょ。黒木メイサは頑張ってはいるし、ぶつ切りとアップでなんとか天才のダンスに見せようとはしているんだけど、それがそのまま画面に刻印されてしまっていては、天才のダンスじゃなく、黒木メイサがダンスを頑張っているようにしか見えないのも無理は無い。そこで流れる曲がJ-POPというのも舐めてる。音楽で言えば、東方神起BoA、MayJの曲やライヴが本当に突然始まると、そう考えたくなくても、avexの宣伝パートのように思えてしまう。それにしては随分と長いPVだ。
突然始まるストリートダンスバトルは、なにかの間違いなのだろうか。どう見ても後ろのダンスのほうが上手いため、相手が「お前の勝ちだ」と言っても、なにが?としか言えない。あれはギャグだったのだろうか。バレエの映画で、ここまでダンスがぼろぼろだと眩暈を覚える。せめて演出で、なるほど凄いんだなという説明をしてほしかった。回りが凄い凄いと言ってても、それは全然説得力に繋がらない。
お話のほうもだいぶいい加減で。明確なライバルがいないせいで、積み重ねで上り詰めた印象が薄く、たまたま回りに世界的ダンサーが集まってきて、たまたまオーディションを受けると、たまたま上手いダンスを踊るように見える。他にも、お父さんの話が全く回収されなかったり、平岡祐太演じる男性が何の為に出てきたのか最後まで分からなかったり。所々で前後のシーンと関係なく入る、仏壇にチーンというのは、笑わせたいのだろうか(それなら成功だけど)。多分だけど、漫画の要素を無闇に詰め込んだため、複数の無駄な要素の集合体になっているのではないだろうか。
短いカット割りや静止画はともかく、黒木メイサの表情に乏しい演技も、回りが状況を説明することでやっと分かるレベル。バレエって表情大事だと思うんだけど…な。
企画の段階で失敗しているのに、合議制で話が進んでしまった印象。