親切なクムジャさん / 114分


親切なクムジャさん

 パク・チャヌク監督による「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」に続く復讐3部作完結編。最後の復讐者は女性。演じるは、チャングムの誓いで有名なイ・ヨンエ

 前二作に比べると、主人公が女性ということで、残酷描写は控えめ。己の非力さを分かっているクムジャさんは、直接手を下さない。
マリアの如きクムジャさんの優しさは、見返りが前提の復讐の過程。刑務所でのシーンは、韓国における女囚さそりリメイクといって差し支えないでしょう(?)。しかし陰惨な印象は無く、ジュネのようにポップでグロテスク(コメディでイメージを脱臼させる演出等)。こういった演出は堂に入ったモノで、洗練されている。生理的な痛みが優っていた前二作に比べバランスがいい。

 一作目「復讐者に憐れみを」での復讐はその暴力を自分の外に向けるため連鎖していく、二作目「オールド・ボーイ」では復讐の連鎖を止めるためその暴力を自分自身に向ける、そして三作目の「親切なクムジャさん」では、その暴力を皆で分ける。個人的には、自分の復讐したい相手への復讐を、同じ様に復讐したいであろう被害者遺族を巻き込み、自分の罪や意識と共に他人に被せるわけで、一番最悪な人間だなと思いました。遊ぶときもいじめる時もみんな一緒みたいなメンタリティと、復讐者が女性であることは、上手くはまっているのではないかと。

 しかし本作が前二作と決定的に違うのは、復讐者が許される部分だ。最初見た時は、画や音楽等演出面で凄いと思わされたが、お話的に美談過ぎて微妙な心持ちだったのだが(とは言え、最も殉教している人物が、自分の思い込みにより裏切られたと感じ、真犯人に計画をばらすシーンなど、美談にしては皮肉が効いてるとは思った)。二度三度見て、あー最後の復讐者はクムジャさんじゃなくて、娘(及び娘の中のウォンモ君)なのかと思うに至りジワジワ味が出てきた。ケーキの豆腐の時点で拍手ものだったが、母娘で考えていることと行為がすれ違うことが、一種の癒しとして提示されるラストとして、結構いいオチではないかと(韓国人だが英語しかしゃべれない娘と母の通訳を復讐相手がするシーンや、自分は捨てられたと思っている娘。また娘の前にだけ現れたウォンモ君等、ディスコミュニケーション故の優しさはテーマの一つか)。

トリッキーな演出で、微妙にお話が破綻してないかという部分を誤魔化されているようで、全面的にサムアップする気にはなれないが、中々考えさせられるグッドクエスチョンではないでしょうか。