アメリ/120分


アメリ

フランスのテリー・ギリアムと呼ばれるジャン=ピエール・ジュネ監督による、近未来のような独特のクレイジーワールドと、童話的SFファンタジーをノスタルジックに描く『ロストチルドレン』『デリカテッセン』とは一風変わったラヴコメディ『アメリ』。
主演は、本作ですっかりフランスを始め、世界中を虜にしてしまったオドレイ・トトゥ。ジュネ作品の特徴である、ある種のいかがわしさや、細部への拘りは控え(マルク・キャロがいない為)、それがポジティブに作用し、逆説的にオシャレ映画♡になっている。沢山のエピソードの積み重ねをどうでもいい話で延々ひっぱっていく所が、そのままこの映画の魅力にもなっていて、CGによるアメリの空想描写♥や、レトロな音楽♡。素敵でチャーミングな映像♥に、いちいちダイナミックなカメラワーク♡。その全てがアメリという人間の主観に立った、現実逃避映画=オシャレ映画♥としての一角を示している。「夢を見ながらも、そこから出ないといけないと思っているが…」といった描写が目立つものの、主人公主観を補強する為のようなもの。その為、肯定的に描かれる人物が揃いも揃って変人。悪く言えば、アメリから見て目線の低い相手♡なのだ。そういう意味で言えば、アメリに酷い目にあう八百屋の主人が一番社会的だといえる。
邦画で例えるなら、『嫌われ松子の一生』『下妻物語』を撮った中島哲也の映画に影響を与えている事が伺い知れる。構造的には、丸っきり魔女っ子アニメ。数年前までならば、上記したような事柄をスノビズムで捉え、
「けっ!オシャレ映画かよ。ジュネも死んだな」
という言い方もギリギリ通ったが、このゼロ年代に、そんな事言う奴も流石にいないだろうし。相対的に、評価が伸びていると推察する。