多重人格探偵サイコ/田島昭宇/大塚英志


多重人格探偵サイコ
多重人格探偵サイコ原作・大塚英志×漫画・田島昭宇 月刊「少年エース」'97年2月号より連載開始。様々な困難を経て、現在(03年8月)なお月刊「少年エース」で連載中。俺は、多重人格探偵サイコをお勧めしない。サスペンスと言うジャンルに置いて、往々にして言えるのだが、構成・編集が疎かになっている。映画の場合シーン。漫画の場合カットに重きを置いていると、それをつなぐコマへの力に明らかな差が出てしまいバランスが取れない。ひきや、ため。複線などを多様する作品ならば、より気を使って作らなければいけないと思う。その上で、ネームという作業が疎かになっているように見える。現段階で、スタイリッシュな画を書かせた上で、キチンと漫画に消化する事の出来る漫画家は少ないだろう。田島昭宇は、コノ漫画を漫画という形式にビルドアップさせる為に、貢献している。この多重人格探偵サイコという作品は、漫画・小説・CD・ドラマ。更に、原作家・大塚英志の執筆する他の漫画や小説など、膨大な量のデータの集積によって出来ている。しかもこのデータ達は、基本的にはデータの末端でありいつまで経ってもコア部分には辿りつけない為、ファン達はこの作品を知る為に、消費をし続けなければならない。その消費の過程で出会えるジャンクの欠片達は多重人格探偵サイコ何て足元にも及ばない、傑作の数々だったりする。サイコ内においてしばいば登場し、物語の中枢を担っている人物「ルーシー・モノストーン」に関する詳細については三木・モトユキ・エリクソン著作「ルーシー・モノストーンの真実」を参考にして貰いたい。この「三木・モトユキ・エリクソン」というルーシーに詳しい精神科医で、大塚英志の大学時代の学友という男なのだが、小説版のサイコが出始めた辺りからよく顔を見せ始め、何で大塚の本で、コイツがルーシーの伝説は嘘だとか一部のマニア以外では、何のカリスマ性もない只のオタクだったとか果てには、大塚の事まで悪態を付いてるのか、とっても不明瞭なまま彼のルーシーに関する情報は逐一小出しにされていった。本人以外の口から、ルーシーへの悪態を付く事によって「三木・モトユキ・エリクソン」を置いて取り敢えず、ルーシーは居る。と認識させ、気が付いたら「三木・モトユキ・エリクソン」も存在している事が当然という事になっている。といった、トリックは、村上春樹デレク・ハートフィールドのようなモノで、特に目新しいものではない。が、このトリックからもリンクが張ってあり、掘っても掘っても底が見えない構造はとても快感だった。 (村上春樹デレク・ハートフィールドの関係もこれで知った訳だし)構造や快感を与えて貰っただけで、この本には大変感謝している。ココからは、俺の推測であったりサイコに言われたと思いこんでいる事なのだが、物語から得られる無数のリンクというモノは、コミュニケーションを意味していると考えると彼が描こうと言っていた、リアルな死などは絵を通した彼の言葉であり人と人の関係というものが文学であり最高の作品である。それをまるでハウ・トゥー本のように教えてくれる。ただ、読んで・感じ・考える事が面白い本もある。しかし、漫画が教えてくれる事は、漫画の事に限らない。