ハイキック・ガール! / 81分


ハイキック・ガール!

『マッハ!』を買い付け大ヒットさせ、2008年に『少林少女』というトンデモヒット映画と『黒帯 KURO-OBI』というB級佳作映画に関わった西冬彦による、初監督映画『ハイキック・ガール!』。要するに今、日本で格闘アクションを見るのなら覚えておいた方がいい人物による初の監督作。
この映画の核は、タイトルにもある通り、戦う女の子である筈なのだが、あれよあれよと主演と努める武田梨奈は存在感を失い、代わりに日本空手協会の総本部師範、中達也がどんどん前に出てきて、気がついたらハイキック・ガールではなく、空手おじさんを見ているという不思議な現象が起きる。確かに強さには説得力があるんだけど…やっぱりこの映画では武田梨奈が見たい。

と言うわけで、この映画は彼女の存在だけで、充分すぎるほど存在価値がある。きっと戦闘美少女が好き→戦隊ヒロインが好き→アイドル女優が好きなら、試しに見てみても損はない。誰もが認める文句なしの美少女かどうかは分からないけど、超かわいかった。というかめちゃくちゃ動けるので、相対的にこんなに動けるのに、これだけかわいいという風に見える。

この映画における空手とは『型』であり、それ自体が話の核にもなっている為、いわゆるカンフー映画に対した形で配置されている。なぜなら、動きを大きく見せるカンフーアクションとは目指している部分が全く異なっていて、動きが小さくカメラで追えない程素早く動き、止め絵で決める、という空手アクションという新ジャンルのお披露目であるからなのだが(そしてスローリプレイの多様は、この空手アクションの特性上の必然でもある)。その新ジャンルの確立に、彼女の型の美しさは今後も欠かせないだろう。

前半の彼女のアクションは、ブルース・リージャッキー・チェン等のオマージュが入っていることからも明らかな通り、カンフー寄りのアクションが混ざるのだが、それはお話上、彼女が師匠に反目しているからという必然性があり、彼女の精神的な成長と共に、カンフーなどの見た目重視のアクションから、地味ながらも実践的な空手のアクションになっていくという演出になっている。これは彼女が、カンフーの動きも空手の動きも、めちゃくちゃ綺麗にこなすからこそ出来ることで、逆に言えば彼女がいなければこの映画は出来なかったと言える。残念ながら、カンフー系の方が見ていてテンションが上がるのだけど、ココら辺は、同じリプレイでもメリハリをつけるなど、空手アクションの演出方法に進化が求められる所だろう。

奇しくも公開時期が重なった『チョコレート・ファイター』と比べられてしまうと残念なところだが。ローからハイまで抜群のスピードで美しく蹴り分ける、スカートからすらりと伸びた脚を見る為だけでも、この映画は見る価値がある。ジージャーの存在によって、影に隠れてしまっているかもしれないが、今後シーンを武田梨奈が引っ張っていく姿が見てみたい。

出番は少ないが、空手アイドルの小林由佳も出ていて、早速、空手女優VS空手アイドルの頂上決戦が見れるのも、戦闘美少女マニア的には見所の一つだと言える。また杉山彩のアクロバティックなアクションも面白い動きだった。格オタ的には、渡辺久江の腹筋と膝も嬉しい。このように敵は空手以外の様々な映画的なアクションを見せる。

しかし正直、武田梨奈を見る映画であって、全体の完成度が高いのかと言われれば難しい。西冬彦が、監督/プロデューサー/企画/原作/脚本/を一人で行っている事に端を発する諸問題によって、違和感を感じる編集や演出が目につく。どのシーン、どのカットも、監督にとって思い入れのあるシーンなのは分かるし、映画のテーマでもあるアクション空手を見せるということはあるとしても、繰り返しスローリプレイで見せるという演出意外にもアイデアがほしい。それで流れが分断してしまうために、アングルも単調で一本調子に見える。おそらく、愛ゆえに映画よりも空手がメインになっているように感じる。
この映画、あてぶりじゃなくて、フルコンタクトで入れてるんだけど(中には外れている所もそのまま映ってる)、そこまでしたのなら、やはり効果的に見たい。骨の音などは悪くないと思う。