重力ピエロ / 伊坂幸太郎


重力ピエロ

ミステリーとも、社会派とも、家族愛とも、どれもこれも空かされて小説の神様(作者)を意識させない、伊坂らしい映画的エンタメ。軽妙で洒落た会話で最後までするっと読ませられちゃいました。こういう文体は村上春樹チルドレンの部類に入るんですかね。ただ逆にふわっとしすぎてて、引っかかりが無い。面白いけど、なんかうざかったです。なにか若者像というのを勘違いしていると言うか、どうしても倫理的にモヤモヤしたものが残って読後感は良くありません。ダーティハリーシンドロームの悪い意味でのエンタメ化という感じ。もしこれが家族と言う、綺麗事を通さずに、例えば友達や恋人という二人だと、ケータイ小説だったり、ROOKIESのような友情モノだったりと、その印象は変わってくるのではないでしょうか。まー社会的にテーマが片付いているとは言いがたいので、こういうものもあって、それがたまたま自分とあわない事だってしょうがない訳ですが。エンタメ作家として凄く力があると思います。