ハンバーガー・ヒル/110分


ハンバーガー・ヒル

南ベトナム937高地、簡単に挽き肉にされてしまう事から[ハンバーガー・ヒル]と呼ばれるようになった丘の、攻略を目指して進撃する米軍部隊を、淡々と描いたベトナム戦争映画。出演者はオーディションで選ばれた、無名の若者たちで、言葉の端々に散らばる、アメリカン・リアリティーを再現する事に貢献している。同時期に公開された<オリヴァー・ストーン>監督のベトナム戦争を描いた作品 [プラトーン]と、ことある事に比較されるが、映画の質が全く違うので、そんな風に見る必要は無いだろう。あえて、比較するならば、主観で語られた[プラトーン]と異なり、 [ハンバーガー・ヒル]は客観で戦場を描写していく。それゆえの悲惨さが、この映画の核だと言う事だろうか。隊内では白人黒人の間で、多少の人種差別的表現をするのだが、自国民にさえも、指示されていなかった戦争でも、差別が行われていたという話は、他の映画では余り語られなかった所だと思う。黒人に「ホワイト・アメリカの為の戦争」と言われ、勇敢に戦った兵士は本国で批判される。誰の、何のための戦争だったのか分からないまま、壮絶且つ悲惨な死体だけが、積み重なっていく。そういった凄惨な戦闘シーンを積み重ねながら、上記したような様々な側面を描き出そうとしている。だが、それぞれのテーマが拡散していて、戦闘シーンばかりが印象に残り、雑な印象を受ける。ただ戦争の悲惨さを描いた作品に成り下がっているのが残念。